アメリカ・カリフォルニア州の Los Altos (ロス・アルトス) に Adobe Creek Way (アドビ・クリーク) という入り江がありますが, Adobe の社名はこの入り江に由来しているそうです. 拡大しても文字の形が崩れない輪郭線対応フォントは Adobe によって開発され, その歴史が築かれてきました. Bitmap Font / PostScript Font / Adobe Type Manager / Adobe Type Reunion / OCF / CID / OTF / Illustrator / Photoshop / Acrobat PDF / Outline / Rasterize などの用語を研究し, 印刷と Web で使用されている書体の成り立ちを理解しましょう.

1980年代後半に普及していた日本語ワープロやPC(MS-DOS)に対応している印刷用フォントは文字をドットの配置によって表現しているビットマップ・フォント(Bitmap Font)でした. ビットマップ・フォントでは通常の用紙でのプリントが可能だったものの文字を大きく表示するとギザギザになってしまうため, このシステムが印刷で使用されることはありませんでした. その後 Adobe から PostScriptフォント(欧文) が提供されたことと Macintosh(OS 6 〜9.2まで) の普及によってDTPが急成長しました. 1989年に初の日本語のフォント・パッケージが発売され, モリサワのリュウミン / 中ゴシックBBB / シンゴPro などが日本語フォントのスタンダードとなりました. この時代のファイル・フォーマットは OCFフォント(Original Composite Format fonts) で, PostScript という規格で日本語環境を構築できることから OCFフォント は一世を風靡しました.


OCFフォントは文字のアウトライン化ができない仕組みになっていたことに加えて ATM(Adobe Type Manager)を Macintosh にインストールしておく必要がありました. そんなもろもろの不便さを解消した新しいフォントが1990年代初頭に発売されました. それが PostScript 対応の CIDフォント(Character ID Font) です. このころからDTP業界に Windows も加わり, PostScriptの日本語文字がどんどん広まりました.


2000年代に入ると Adobe による PostScript のサポートが終了してしまい商業印刷業界全体に大きな影響をあたえました. PostScript 対応の日本語フォントは Microsoft と Adobe が共同開発した OTF(OpenType Font) という新しい企画に移行し, DTP や印刷物の制作として用いられてきた日本語文字は OTFフォント(Original Composite Font) に変更されました(文字の範囲は大きく広がった). OTFフォント はマルチ・プラット・フォームと呼ばれ, Windows と macOS で同じフォントを導入して全く同じ表示 / 印刷することが可能となりました.